空を泳ぐ鯉のぼりのイラスト
親子の鯉のぼり
こどもの日イラスト素材集のページに収録した鯉のぼりのイラストです。
空を泳いでいるのは、親子の鯉のぼり(家族鯉のぼり)です。
いちばん上にいるのは真鯉(まごい)と呼ばれ、父親をあらわしています。
ボディ色は黒で、三体のなかでもっとも大きな形をしています。
その下の女性的な鯉のぼりは緋鯉(ひごい)と呼ばれ、母親をあらわしています。
色は赤で、二番目の大きさです。
いちばん下の小さい鯉は子鯉(こごい)です。
文字通りこどもをあらわしています。
子鯉が出始めた頃は青色で統一されていたようですが、上のイラストの子鯉は緑色にしてあります。
緑色のほうが可愛く見えるからです。
竿の先の「吹き流し」と「回転球」と「矢車」について
真鯉の上にあるのは「吹き流し」です。
竿のてっぺんについている丸いものは「回転球」。
その下の車輪のような輪が、「矢車」です。
「吹き流し」には魔除けの働きがあるとされています。
「回転球」は、天空の神様をお呼びする目印であるとのことです。
「矢車」は、邪気を打ち破る役割があるそうです。
この3セットがあれば、竿を立てた家の家族は安泰であるということなのでしょう。
「家族鯉のぼり」に模した人間の家族は、この3セットで守られているということです。
家族鯉のぼりの普及
「家族鯉のぼり」と書いていますが、この「家族鯉のぼり」が普及したのは、1964年(昭和39年)以降だと言われています。
それまでは、鯉のぼりに「お母さん鯉」はなかったのです。
昭和6年発表の動揺「こいのぼり」の歌詞に「お母さん鯉」は登場しません。
屋根より 高い こいのぼり
作詞者は近藤宮子、作曲者は不明
大きい 真鯉は お父さん
小さい 緋鯉は 子供たち
面白そうに 泳いでる
昭和39年といえば、東京オリンピックが開催された年です。
ニックネームが「東洋の魔女」だった日本女子バレーチームの大活躍が大称賛の的となった年です。
この年を契機に、女性(母親)の存在感が急上昇したのかもしれません。
家庭において母親の発言権が確固としたものになったのです。
それまでは、お父さんと子どもたちだけの鯉のぼりでしたが、お母さん鯉の存在が欠かせなくなったのです。
あるいは、親子セットの鯉のぼりを作ったら、爆発的に売れたとか。
それはともかくとして、現在では父親である真鯉と母親である緋鯉と子どもの子鯉が基本セットで販売されています。
美学
しかし、水中の魚である鯉が、空を泳ぐという発想は面白いですね。
その発想の根本には「武士の美学」があると私は思っています。
勇壮で美しくあれという美学が、鯉を空に泳がせているのでしょう。
その美学は、大正2年(1913年)発表の童謡にあらわれています。
下記の引用は弘田龍太郎作曲「鯉のぼり」の三番目の歌詞です。
この歌詞を読めば、鯉を空に泳がせる理由がわかります。
百瀬(ももせ)の滝を登りなば、
作詞者不詳、作曲者は弘田龍太郎
忽(たちま)ち竜になりぬべき、
わが身に似よや男子(おのこご)と、
空に躍るや鯉のぼり。
鯉を空に泳がせる理由
小さな男の子を山奥に連れて行って、鯉が滝を登って竜になる姿を子どもに見せるのは、あまり現実的ではありません。
家の庭に竿を立てて、それに鯉のぼりをつなぎ、風でふくらませて空を泳がせます。
その鯉のぼりの姿を子どもに見せながら、鯉が滝を登って竜に出世する伝説を親が子に語って聞かせるのです。
親と子の語らいのなかで、子どものイメージは大きくふくらみ羽ばたこうとするでしょう。
鯉のぼりが風をはらんで勇壮に空を泳いでいる姿と、自身の姿を子どもは重ね合わせるのです。
家庭の絆と、子どもの夢。
それが、 鯉を空に泳がせる理由 です。
こどもの日は、穏やかに暮らす家族の日
武士のいない現代では、鯉が滝を登って竜になったという伝説の輝きも薄れつつあります。
鯉が竜になるなら、アユやイワナやサケは何になるのだろう、なんてね。
真鯉と緋鯉と子鯉が、家族そろって大空に舞っている様子は穏やかです。
こどもの日は、穏やかに暮らせることを願う家族の日でもあるのです。
力強い父親と、優しい母親と元気な子どもが、空を仲良く泳いでいる。
そんな鯉のぼりのイラストです。