雪どけの山の湿原に生える水芭蕉のイラスト
花びらのように見えるのは仏炎苞
春のイラスト素材集のページにある水芭蕉のイラストです。
水芭蕉はサトイモ科の大型多年草。
中部地方以北の山地の湿原に群落を作る植物です。
上のイラストの、白い大きな花びらのようなものは仏炎苞(ぶつえんほう)と呼ばれている「 苞 (ほう)」です。
「 苞 」とは、花の基部にあって、花が開く以前のつぼみを包んでいた葉のこと。
白い花のように見えますが、葉が変形したものです。
仏炎苞を衝立のようにして、その前に立っている円柱状のものが、水芭蕉の花。
イラストのように、小さな花が多数集まって花序(かじょ)を形成しています。
仏炎苞は、仏像の後光に似ています。
まるで小さな花から放たれた光のようです。
水芭蕉の群落地
尾瀬や網走湖湖畔は、 水芭蕉の有名な群落地として 知られています。
標高の高い尾瀬(標高約1400メートル)では、夏でも冷涼で、水芭蕉は6月上旬頃開花します。
そのため、尾瀬では水芭蕉は夏の花としてのイメージがあります。
青森県の八甲田山では、睡蓮沼付近が水芭蕉の群落地として知られています。
ゴールデンウィークを過ぎて、5月の中下旬頃から咲き始め、雪深い八甲田に春の到来を告げる花となっています。
ツキノワグマの排出行為
ツキノワグマは、春になって「冬ごもり」が終わると、体内の老廃物を排出(嘔吐または下痢)するため、水芭蕉の花や葉を食べることがあるそうです。
ツキノワグマは、水芭蕉に含まれている毒成分であるアルカロイドを利用して、このような排出行為をするということです。
人間は、マネをしてはいけない熊の習慣です。
私の大好物である山菜のミズ(ウワバミソウ)も湿原とか沢筋とか、水芭蕉が好みそうな場所に群生します。
ミズは、水芭蕉の花が枯れた頃から食べごろに成長します。
その時期に、八甲田山の麓の低山にミズを採取に行きますが、クマに出会ったことはありません。
クマの排出物らしきものを見かけたこともありません。
周辺はクマの出没エリアなのですが・・・
季節を巡る水芭蕉
水芭蕉の花が終わっても、葉は秋口頃まで青々としています。
水芭蕉の大きな葉がタバコの葉に似ていることから、岩手の貞任高原 (さだとうこうげん)の水芭蕉の群落地は、昔は「タバコバタ(煙草畑)」と呼ばれていたとか。
上のイラストの葉は中ぐらいですが、大きなものは葉の長さが1メートルぐらいまで伸びるものもあります。
秋の中ごろ、キノコ採りのシーズンになると、水芭蕉の葉は倒れ伏して枯れ始めるのです。
春の雪どけから秋まで、凹んだ湿地で花を咲かせ、葉を広げ、そして枯れて地上から消える。
そうやって季節を巡る水芭蕉のイラストです。